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2015年06月18日

撲滅運動に徹底抗戦!我々カビが生き残るために。

提供元:girlswalker.com(http://girlswalker.com/

梅雨といえばカビとダニの季節である。この時期に確実に繁殖しておかないと我々に未来はない。

【カビ】水気が残り、少しでも汚れたら浴室はカビのゆりかごになる。

本日、講師を務めるのはカビ解放軍の軍医、カビリアーノである。
諸君、我々、カビとは何者か?そもそもカビはヒトが勝手に名づけた俗称であって、定義さえあいまいである。正確にはキノコや酵母と同じ真菌類だ。普段は胞子となって空気中を漂い、安息の地を求めてさまよう旅人。我々の仲間は世界にざっと4万種類はいるといわれている。そう聞くと頼もしい思いも湧いてくるだろう。
だが、しかし! このところの日本人の清潔志向には目に余るものがある。コウジカビ(麴菌)に味噌や醬油を作ってもらったり、青カビに抗生剤のペニシリンを作ってもらったりしているくせに、やたら我々を目の敵にする。
我々は三大条件がそろわないと生息できない、実はデリケートな存在だ。あまり攻撃されては絶滅危惧種に転落しかねない。
賢明なる諸君には、もう申すまでもないが、その三大条件とは平均20~30度という暖かな室温と、カビ肌もしっとり潤う70~90%の湿度。そして、エサとしてはヒトが毎日せっせと生産してくれる垢、フケなどの有機物があればグルメライフを送れるだろう。
ただし、高い湿度を保つ場所は限られる。一般的に気密性の高い現代日本の家屋では、ずばり浴室! ここが狙い目である。ヒトが入浴後、天井の換気扇で湿度を下げたところで、天井、壁、床や排水溝に水が残ってさえいれば、一気に大繁殖も期待できる。



温冷交替シャワーでは壁が冷えて困るのだ。
さて、ここでよくある失敗例と成功例をお目にかけよう。まずは、独身男、というだけでも我々が生えそうだが、この男、なかなかに神経質で、入浴のたびに上がり湯を浴びたら浴室の壁にシャワーで熱めの湯をかけていた。
そもそもこの男、カラダを洗う際は浴用いすに座るから、石鹼カスやら垢、フケなどが壁の低い位置にしか飛び散らないのに、湯をかけて流されては非常に困る~。
しかも、湯で壁を流した後にとどめを刺すかのように、湯から冷水に切り替えてシャワーなのだ。これをやられてしまうと壁や床の温度が一気に下がってしまい、我々にとっては地獄となる。
ここだけは見落としてくれるかと、かすかな期待を寄せたシャンプーやコンディショナーの容器の底まで、壁を洗うときに一緒に洗って、拭かれてしまった。
洗われることのなかった天井の換気扇には、ホコリがちらほらと溜まっていたが、そこに退却していた仲間まで、月に一度の大掃除の際に掃除機に吸引されてしまった。これは目を覆わんばかりの大惨事の例である。



諸君にはいきなり心臓に悪い話をしたが、いい報告もある。別の独身男宅では一時的ながら平和な時代を送ることができた。
この男は浴槽に湯を張るのを面倒くさがり、シャワーで済ませていたうえに、立って浴びてくれたから、壁の高い位置まで広範囲に汚れを出前してくれた。
もちろん、壁をシャワーで洗いなどせず、浴槽の蓋も浴室内に立てていたから、蓋の凹凸部にはかわいい同胞の姿が見られた。まれに、使わない蓋を脱衣所に出して、飛散を防ぎながら入浴するという悲劇も耳にはするが……。
なのであったが、最悪なことにこの男、ある日ホームセンターに立ち寄った際に、洗剤と掃除用品を大人買いしてしまった!

大量破壊兵器の出現でカビの運命は風前の灯。
見てほしい、下に並ぶ残忍極まりない凶器の数々。手の届きにくい壁の高い位置や天井の水滴、結露を一掃する柄付きブラシを見かけたら、できるだけ低い位置に退却するほかないのだが、大小2つに分離するブラシは我々の聖地、タイルの目地さえ攻撃する。
普通のブラシが届きにくい細かい箇所を攻略するコンパクトタイプやグローブ形式のものなど、従来の常識では想像もできないパフォーマンスで我々を攻めたてる。もはや息つくヒマもない。
最終兵器、塩素系漂白剤にいたっては、我々を一網打尽にするだけでなく、もう我々はいなくなったにもかかわらず、目地やパッキンの中に残る黒い色素を漂白してしまい、我々が生きた痕跡さえかき消してしまうのだ! 驚いたことにいまでは薬液を電動でスプレーするものまで現れた。恐ろしい時代になったものである。
この塩素系に抵抗して地道な活動を続けてきた同胞、最近では〝ピンク汚れ〟などとヒトから呼ばれる菌の諸君も、進化した中性洗剤には刃向かうのが難しくなり、敗色濃厚となってしまった。毎日の入浴前後に気楽に使える洗剤には、壁や浴槽の水切れがよくなるものまで出現した。



2軒目として紹介した独身男宅は楽園から地獄へと一変してしまい、同胞の多くは亡命を余儀なくされたと聞く。諸君はこうした悲劇に見舞われないよう、慎重にホームステイ先を選んでほしい。



取材・文/廣松正浩 イラストレーション/佐々木一澄 取材協力/弦巻 和(花王 生活者コミュニケーションセンター)、毎田祥子(家事アドバイザー)





Tarzan (ターザン) 2015年 6月25日号 No.674